診療支援
治療

排尿困難
difficulty of voiding(urination)
小島祥敬
(福島県立医科大学教授・泌尿器科学)

頻度 よくみる

治療のポイント

・排尿困難の原因は多岐にわたるため,治療効果が不十分である場合は,すみやかに専門医に紹介することが重要である.

・排尿困難の原因によって,治療法が全く異なることを認識しておくことが必要である.

・薬剤の副作用で排尿困難を引き起こすことがあるので,十分な問診が必要である.

◆病態と診断

A病態

・下部尿路症状には,排尿期に生じる症状(排尿症状)と蓄尿期に生じる症状(蓄尿症状)の2つが存在する.

・排尿症状には,尿勢低下,尿線途絶,腹圧排尿などがあり,これらを総称して,もしくは便宜上「排尿困難」とよぶことが多い.

・排尿困難(排尿症状)は,一般的に排尿障害により生じることが多い.排尿障害の原因は,下部尿路閉塞と(膀胱)排尿筋収縮障害に大別されるが,特に高齢者の場合両者を合併していることがある.

1.下部尿路閉塞の原因

・男性:前立腺肥大症,進行性前立腺癌,尿道狭窄,尿道結石,神経因性膀胱など.

・女性:骨盤臓器脱(膀胱瘤など),尿道憩室,神経因性膀胱など.

2.排尿筋収縮障害の原因

・低活動膀胱,神経因性膀胱(糖尿病や骨盤内手術術後の末梢神経障害),薬剤性.

B診断

1.問診

・排尿症状のほかに,尿意切迫感,頻尿,夜間頻尿などの蓄尿症状,残尿感などの排尿後症状があるかどうか確認する.国際前立腺症状スコアによる問診を行うことによって,排尿症状の有無が把握できる.

・患者は排尿症状と蓄尿症状の区別をしていないこともあり,蓄尿症状を主体としているにもかかわらず,排尿困難と訴えることがあるので注意が必要である.頻尿や尿意切迫感(過活動膀胱)を有する患者が,尿が十分たまっていない状態でトイレに行って排尿する場合,排尿量が少ないために,それを排尿困難として訴える場合があるので,注意が必要である.

・既往歴や併存疾患として,中枢性・末梢性神経障害の有無を問診する.

・薬剤の副作用で排尿困難を引き起こ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?