診療支援
治療

尿失禁
urinary incontinence
福原 浩
(杏林大学主任教授・泌尿器科学)

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治療のポイント

・切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁に大別され,両方を有する混合性尿失禁も多い.

・切迫性尿失禁とは尿意切迫感を伴う尿失禁のことであり,薬物療法が有効である.なお,尿意切迫感とは「急(突然)に起こる我慢できないような強い尿意」である.

・腹圧性尿失禁は主に女性でみられ,まず骨盤底筋訓練を行う.効果不十分・無効な場合は手術治療が行われる.

・それ以外に溢流性尿失禁があり,他の尿失禁とは異なり,原因が尿排出障害であることに注意を要する.

・尿失禁の病態は男性と女性で異なっており,診断には注意が必要である.

◆病態と診断

A病態

・尿失禁とは,不随意に尿が漏れることである.

・尿失禁は,切迫性,腹圧性,混合性(切迫性と腹圧性),溢流性に分類される.

・切迫性尿失禁とは,「トイレまで間に合わない」という尿意切迫感と同時または直後に起こる尿失禁である.

・腹圧性尿失禁は女性に多くみられ,運動時や咳・くしゃみなど,腹圧負荷時に認められる尿失禁である.分娩などで骨盤底組織が脆弱になることで起こりやすい.男性でも前立腺疾患の外科手術後に尿道括約筋機能の低下により,腹圧性尿失禁を呈する場合がある.

・混合性尿失禁とは,切迫性と腹圧性の両方を認める尿失禁である.

・溢流性尿失禁とは,慢性尿閉などに伴い尿排出機能障害を生じ,膀胱内に貯留した尿が溢れ出てくる状態をいう.

・排尿後滴下は,排尿直後にぽたぽたと尿が不随意に出てくることで,厳密には尿失禁ではないが,尿失禁として受診されることがある.男性では便器から離れたあと,女性では立ち上がったあとにみられる.

B診断

・まず,尿失禁が起こるきっかけや頻度・量などの問診が重要である.特に,「トイレまで間に合わない」という尿意切迫感の有無を問うことによって,切迫性か腹圧性かの鑑別を行う.混合性の場合もどちらが優位であるかを判断できる.主要下部尿路症状スコア(CLS

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