診療支援
治療

腸管利用尿路変向術とそのケア
urinary diversion using the intestinal tract and its care
古家琢也
(岐阜大学大学院教授・泌尿器科学)

ニュートピックス

・ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術が保険収載となり,それに伴って,本邦においてもロボットを利用した尿路変向術が徐々に増加している.

治療のポイント

・尿路変向術は,膀胱全摘除術と併せて行われる手術であるため,術式ごとではなく,両術式を併せた合併症を認識しておく必要がある.

・ロボット手術は低侵襲手術とされているが,重篤な合併症は起こり得る.

・どのような方法で行うにしても,手術時間が比較的長時間となるため,合併症発症頻度は比較的高いと認識しておく必要がある.

・腸管利用尿路変向術には,主に回腸導管と新膀胱造設術があるが,腸管を利用するという点においては,ポイントはそれほど大きくは変わらない.

◆病態と診断

A病態

・基本的に小腸を用いた尿路変向術を行う.腹部にストーマを作成する,尿失禁型の回腸導管が最も多く行われている.尿禁制型の新膀胱造設術を行うこともあるが,排尿訓練が必要なため,高齢者に行う場合には適応を慎重に選ぶ必要がある.年齢や併存疾患のため手術をできるだけ単時間に終了させる必要がある場合や,上部尿路の再発の可能性が高い場合は,尿管を直接腹部に出す尿管皮膚瘻を選択する場合もある.

・出血による病態として,血圧の低下,頻脈,尿量の低下,ドレーン排液量の増加,ドレーン排液の性状の変化などを認める.

・手術時間の延長に伴う合併症として,体液の不均衡に伴う血管内脱水,サードスペースへの水分の移動,浮腫,尿量の低下などを認める.

・腸管を利用することによる合併症として,術後イレウス,吻合部の縫合不全,尿の再吸収に起因するアシドーシスなどを認める.

B診断

・血圧の低下,頻脈,ドレーンの性状および排液量の増加,尿量の減少などが認められた場合,まずは術後出血を疑う.患者の状態が悪化する前に,CT(できるだけ造影CTを行う)を行い,出血の原因を検索する.活動性の出血の場合,血管内治療による塞

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