頻度 よくみる〔生殖補助医療(ART)は一般に体外受精と顕微授精を意味する.現在の日本では5.5組に1組が不妊であり,13~14人に1人がARTで誕生している.ARTによる妊娠率・生児獲得率はそれぞれ30歳で28%・22%,40歳で15%・10%程度である〕
治療のポイント
・年齢とともに成功率は低下し,特に35歳以降はその傾向が強いので,より早期の治療が望ましい.
・重篤な副作用として調節卵巣刺激に伴う卵巣過剰刺激症候群がある.
・令和4年4月から保険適用(回数制限あり)になっている.
・若年癌患者において,性腺毒性の強い化学療法前に精子または卵子を凍結しておき,将来的にARTで妊娠する妊孕性温存療法には補助金が出ている.
◆病態と診断
・不妊症では子宮,卵管,卵巣,卵子,精子などさまざまな部位での異常が原因となる.原因不明の不妊症も1/3程度ある.
・原因が明確なものは原因の治療で妊娠可能となることがある.
・原因が明確なものも,不明なものも,すべてARTの対象となる.
・妊娠前に妊娠に適した健康状態にしておく(プレコンセプションケア).
・精液検査を行い,精子の状態が不良な場合は顕微授精を行う.
・抗ミュラー管ホルモンの測定により卵巣予備能が評価でき,測定値に応じた調節卵巣刺激を行う.
◆治療方針
ARTを施行できる施設は日本産科婦人科学会の施設の要件を満たし,認定されていることが必要である.ARTの基本は卵子と精子を体外で受精させ,良好な胚を子宮内に戻して妊娠を得ることで,このために種々の処置を行う.①調節卵巣刺激:薬剤の使用により複数の卵胞を発育させる.②LHサージの抑制:調節卵巣刺激によりLHサージが自然に起こり予定外の排卵が起きることを避けるために,薬剤によりLHサージを抑制する.③排卵誘発:卵子を排卵直前の成熟状態に導くため排卵誘発剤を投与し,排卵の直前に採卵を行う.④採卵:局所麻酔