診療支援
治療

早発卵巣不全,早発閉経
primary(premature)ovarian insufficiency(POI)/premature menopause
岩佐 武
(徳島大学大学院教授・産科婦人科学)

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治療のポイント

・卵巣機能の回復は見込めないので,挙児希望がある場合は早期からの不妊治療を考慮する.

・複数の排卵誘発法が試みられているが,その効果はいずれも限定的とされている.

・卵子提供が有効とされるが,これに対して本邦の関連学会は慎重な立場をとっている.

◆病態と診断

A病態

・卵巣内の残存卵胞が早期に減少し,卵胞発育不全により無月経となる.

卵巣機能低下によりエストロゲン低値・ゴナドトロピン高値となる.

排卵障害による不妊症やエストロゲン分泌低下に伴う諸症状が問題となる.

・リスク因子として手術,化学療法,放射線療法,感染,染色体異常,遺伝子変異,自己免疫性疾患などが知られているが,原因が特定されない場合も多い.

B診断

・40歳未満で3か月以上の無月経を呈し,血中ゴナドトロピン高値,血中エストロゲン低値により診断される.ただし,無月経の期間や血中ゴナドトロピン高値について,国際的な定義は定まっていない.

◆治療方針

 挙児希望がなければ骨粗鬆症予防などの観点からホルモン補充療法を行う(,「無月経と排卵障害」,,「更年期障害」の項を参照).

 挙児希望があれば排卵誘発を試みるが,いずれの方法であっても奏効率は低い.自己卵子による妊娠率は5~10%とされているが,報告間での差が大きく母集団が少ないため正確な評価は難しい.卵子提供が最も有効な方法とされるが,本邦の関連学会は法の未整備などを理由に慎重な立場をとっている.

A排卵誘発法

 早発閉経・早発卵巣不全では持続する高ゴナドトロピンによって卵巣の脱感作が生じ,卵胞発育がさらに阻害されると考えられている.そこで,高ゴナドトロピンを是正することで卵巣の感受性を高める方法が提唱されてきた.すなわち,エストロゲン補充やGnRHアゴニスト投与下においてゴナドトロピン製剤による卵巣刺激を試みる.ただし,本治療は保険適用外となることに留意す

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