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GL産婦人科診療ガイドライン 産科編2023
GL産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023
ニュートピックス
・日本産科婦人科学会は倫理的理由から胎児染色体異数性に対する着床前染色体異数性検査(PGT-A)を禁止してきたが,2022年4月から見解を改定して,実施可能となった.
治療のポイント
・抗リン脂質抗体症候群(APS:antiphospholipid syndrome)に対して,低用量アスピリン,ヘパリン療法によって約80%の出産率が得られる.
・原因不明不育症に対する確立された治療法はないが,薬物投与なく,既往流産3~4回なら次回妊娠で60~70%が出産可能.
◆病態と診断
A病態
・流産とは妊娠22週未満の妊娠の中断を指す.妊娠12週以降の後期流産には死産届が必要.
・稽留流産,進行流産,不全流産,完全流産という経時的変化をたどる.出血,下腹痛,胎児心拍がみられる場合,切迫流産といい妊娠継続が期待できる.
・頻度は妊娠の15%.90%以上は初期流産であり,胎児(胎芽)染色体異常が80%を占める.後期流産は子宮内感染など早産と同じ病態.
・流産や死産が2回以上ある状態を不育症,3回以上連続する流産を習慣流産という.不育症は5.0%,習慣流産は1.1%の頻度である.不育症の原因は,カップルの染色体構造異常約5~8%,子宮奇形約3%,抗リン脂質抗体10%(強陽性が持続するAPSは1%未満),胎児(胎芽)染色体異数性40%であり,約25%が原因不明である.
・女性の加齢,既往流産回数が強い危険因子であり,男性の加齢,肥満,喫煙,カフェインも関与する.
B診断
・問診,基礎体温表による正確な妊娠週数を前提として,妊娠5週5日前後から複数回の経腟超音波検査法によって心拍を確認する.2回以上の流産では子宮内容除去術(手動真空吸引法)を行い,絨毛染色体検査によって胎児(胎芽)染色体を調べる