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ニュートピックス
・女性の結婚年齢の上昇と生殖補助医療技術の進歩により高年妊娠は増加を続けている.2020年に日本で生まれた児の約30%は35歳以上の母体からの出生である.
・2022年4月から,人工授精などの一般不妊治療と体外受精・顕微授精などの生殖補助医療が保険適用となった.国によるこれらの施策が高年妊娠の増加にどのような影響を与えるのか,ひいては日本の周産期医療にどのような影響を与えるのか,注視する必要がある.
ポイント
・加齢に伴い基礎疾患をもつ女性は増加する.必然的に,高年妊娠では偶発合併症の頻度が増加する.
・高年妊娠ではさまざまな産科異常の頻度が増加する.
・高年妊娠自体がハイリスク妊娠である.偶発合併症の増悪や産科合併症の早期発見に努め,必要に応じて児の娩出すなわち妊娠の終了を計画する.
◆病態と診断
・日本産科婦人科学会は35歳以上の初産婦を「高年初産婦」と定義しているが,「高年妊娠」の明確な定義は存在しない.本項では35歳以上の妊娠を「高年妊娠」と定義し,解説する.
・高年妊娠では,子宮筋腫や子宮腺筋症などの婦人科疾患や,高血圧,糖尿病などの偶発合併症の頻度が増加する.妊娠は偶発合併症の増悪を引き起こす可能性があり,偶発合併症は妊娠の経過に悪影響を与える可能性がある.
・高年妊娠では,妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,前置胎盤,常位胎盤早期剥離,流早産,胎児死亡といった産科異常の頻度が増加する.
・高年妊娠の児への影響については,胎児染色体疾患など胎児自身の問題によるものと,妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群など母体の産科合併症によるものとがある.
・生殖補助医療技術の進歩により超高齢妊娠も増加した.1990年には224人に過ぎなかった45歳以上の母体からの出生児は,2020年には1,676人にまで増加した(うち50歳以上の出生数は52人).これら超高齢妊娠は高年妊娠のなか