診療支援
治療

合併症妊娠(内科疾患)
medical complications during pregnancy
杉山 隆
(愛媛大学大学院教授・産科婦人科学)

Ⅰ.糖尿病合併妊娠

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GL糖尿病診療ガイドライン(2019)

治療のポイント

・糖尿病女性の場合,妊娠初期の高血糖と先天奇形の発生とが関連するので,計画妊娠が重要であり,HbA1cは6.5%未満での妊娠が望ましいが,低血糖を生じない程度にコントロールすることが重要である.

・妊娠中は,経口血糖降下薬は使用しない.

・妊娠経過によってインスリン抵抗性が増大するため,インスリン必要量は次第に増加し,個人差はあるものの必要量は1.5~2倍まで増加する.

・分娩後インスリン必要量は急激に低下することに留意する.

◆病態と診断

・糖尿病合併妊娠とは,妊娠前より糖尿病(1型あるいは2型)と診断されている女性が妊娠した場合に診断される.

◆治療方針

 妊娠の目的は,糖尿病合併症を進行させないこと,妊娠合併症を増加させないことである.妊娠中の血糖コントロールの目標達成が重要である.そのために毎食前,食後2時間,就寝前の1日7回,血糖自己測定(SMBG:self-monitoring of blood glucose)を行う.食後血糖が高い場合は,4~6分割食とする.目標血糖値は,空腹時血糖値95mg/dL以下,食後1時間値140mg/dL以下あるいは食後2時間値120mg/dL以下,HbA1c6.0~6.5%未満(母体の鉄代謝の影響を受ける点に留意する.そのため,SMBGによる血糖管理目標値を優先する.HbA1cの管理目標値は妊娠週数や低血糖のリスクなどを考慮し,個別に設定する)を目指す.

 インスリン治療の場合,耐糖能の程度によって,超速効型インスリン(インスリン アスパルトやインスリン リスプロなど)の各食前の3回打ち法(皮下注射)や,それに加えて持効型インスリン(インスリン デテミルなど)を就寝前に打つ4回打ち法などがある.24時間の持続血糖測定を実施する場合もある.必要があれば持続皮下イ

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