診療支援
治療

合併症妊娠(外科疾患)
surgical emergencies during pregnancy
亀井良政
(埼玉医科大学教授・産科婦人科)

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治療のポイント

・手術療法・薬物療法の選択は基本的には非妊時と変わらない.

・従来は開腹手術が優先されたが,現在は腹腔鏡下手術も選択される.

・妊娠に伴う母体の生理的変化と,疾患が母体胎児に及ぼす影響も考慮する必要がある.

Ⅰ.子宮筋腫

◆病態と診断

A病態

・妊産婦の高齢化に伴い,頻度は増加しつつある.

・妊娠期間を通じての子宮筋腫のサイズの変化については一定の報告はない.

・子宮筋腫の合併により,妊娠中の合併症(流産,早産,前期破水,常位胎盤早期剥離,子宮内胎児発育不全)や分娩時の合併症(胎位・胎勢の異常,帝王切開,分娩時異常出血)の頻度が増加する.これらの頻度は,子宮筋腫径が5cm以上,容積として200cm3 以上の場合にさらに増加する.

・妊娠中,10%以上の妊婦に筋腫の変性に伴うと考えられる筋腫部位に一致した疼痛,下腹部痛を認め,CRPの上昇を伴う.痛みは1~2週間持続し,鎮痛のためにペンタゾシンが必要となることもある.

B診断

・妊娠前あるいは妊娠中も,超音波断層検査にて診断は容易である.

◆治療方針

 子宮筋腫の位置や胎盤との位置関係を把握しておくことは,胎位・胎勢の異常,軟産道の通過障害,常位胎盤早期剥離のリスクの評価には必要である.

 妊娠中の治療の原則は,経過観察を基本とし,筋腫核出術は一般的ではない.

 筋腫の変性に伴う疼痛に対して,ペンタゾシンを用いる場合もある.

 既往に子宮筋腫核出術を受けている場合には,その手術様式によっては経腟分娩を避けるべき場合があり,慎重な判断が求められる.

■専門医へのコンサルト

・子宮筋腫の変性に伴う疼痛が強い場合には高次医療機関への紹介が必要となる.

・子宮筋腫のサイズが大きかったり,胎盤と近接していて分娩時の大量出血のリスクが高いと判断された場合にも,高次医療機関への紹介を考慮する.

■帰してはいけない患者

・局所の疼痛を伴う子宮筋腫合併妊娠で

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