診療支援
治療

胎児発育不全(子宮内胎児発育遅延)
fetal growth restriction(intrauterine growth restriction)
金西賢治
(香川大学教授・周産期学婦人科学)

GL産婦人科診療ガイドライン 産科編2023

ニュートピックス

・低出生体重児は出生後,成人期にかけて高血圧,糖尿病や心血管系疾患などのリスクが高いことが最近のDOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)研究による疫学的な知見から明らかになってきた.今後,胎児発育不全(FGR)では胎児期の管理のみならず出生後のこれらの疾患に対する早期の介入も考慮される.

治療のポイント

・重篤なFGRに対する確立した治療法はなく,原因が母体因子など明らかな場合はその治療・管理を行いながら現在の胎児の発育,健常性を評価し,適切な娩出時期,娩出法を決定することが重要である.

◆病態と診断

・FGR(fetal growth restriction)は何らかの原因により胎児が正常の発育に比較して小さいことを指し,以前には子宮内胎児発育遅延(IUGR:intrauterine growth retardation)とよばれていたが,現在は胎児発育不全で統一されている.

・超音波診断装置の発展により推定胎児体重の計測が一般化し,これをもとに胎児発育曲線において-1.5SDを下回る場合にFGRと診断されるのが一般的である.

A病因

・母体因子,胎児因子と胎児付属物因子があげられる.染色体異常,形態異常や妊娠初期のウイルス感染など胎児自体の異常が胎児因子としてあげられ,母体因子としては母体疾患(妊娠高血圧症候群など)による胎盤の機能不全から胎児発育不全へと至るもので,妊娠中から後期にかけての発症となる.

・胎児は発生の段階から,多くの細胞分裂により細胞を増やしながら分化し,妊娠中~後期にかけてそれぞれの細胞自体が肥大し発育していく.FGRはどの時期に発育が障害されるかでこれまで大きく2つのタイプに分類されてきた.妊娠のより早期に発育が障害されるType 1(Symme

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