診療支援
治療

小児の予防接種
immunization in children
中野貴司
(川崎医科大学主任教授・小児科学)

ニュートピックス

・2023年4月,9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが定期接種に使用可能となった.

・2023年4月,四種混合ワクチン(DPT-IPV:ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)の定期接種開始月齢が,生後2か月となった.

・2023年3月,五種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ・Hib)が薬事承認された.

・小児のCOVID-19ワクチンについては,知見の集積とワクチン開発が進行中である.

A予防接種とワクチン

 予防接種により,私たちには感染症に対する抵抗力すなわち免疫が付与される.予防接種に用いられる薬剤がワクチンである.

 ワクチンは従来から,病原微生物を弱毒化して製造する「生ワクチン」と病原性や感染力をなくして製造する「不活化ワクチン」の2つに分類されていた.COVID-19ワクチンの開発により,メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンやウイルスベクターワクチンといった新しい技術を用いたワクチンが広く使われるようになった.

 予防接種法に基づいて実施されるものが「定期接種」,それ以外は「任意接種」と呼称される.COVID-19ワクチンは,予防接種法に基づき「特例臨時接種」として開始された.

B期待される効果と有効率

 ワクチンに最も期待されることは,接種により発病を防ぐことである.ワクチンの有効率(発病予防効果)は,非接種群における発病者の人数と接種群における発病者の人数から計算される.注意点として,「発病予防の有効率が70%」ということは,“100人の接種者のうち70人は発病しない”という意味でなく,“ワクチンを接種せずに発病した者のうち70%は,接種をしていれば発病を回避できた”という意味である().評価指標を「発病」でなく,「重症化」や「死亡」として解析した場合は,「重症化予防効果」や「死亡予防効果」の有効率が算出される.

C安全性

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?