診療支援
治療

原発性免疫不全症
inborn errors of immunity(IEI)
笹原洋二
(東北大学病院・小児腫瘍科長)

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GL原発性免疫不全症候群診療の手引き(2017)

GL自己炎症性疾患診療ガイドライン2017

ニュートピックス

・原発性免疫不全症(IEI)には現在400以上の疾患が含まれており,毎年増加している.

・新生児マススクリーニング追加検査を導入した都道府県が増えている.

治療のポイント

・さまざまな感染症が重症化しやすいため,疾患に応じた感染予防法と,病原体に即した感染症治療を迅速かつ適切に行う.

・疾患により自己免疫疾患,アレルギー疾患,悪性腫瘍を合併することがあり,感染症以外の合併症の診断と治療を並行する.

・根治療法として,適応疾患に対しては同種造血幹細胞移植を行う.一部の疾患では,造血幹細胞を標的とした遺伝子治療の臨床試験が行われている.

◆病態と診断

A病態

・IEIの基本病態は,疾患責任遺伝子変異が原因で起こる免疫担当細胞の分化・機能障害であり,易感染性のほかに,自己免疫疾患,アレルギー,悪性腫瘍を合併する疾患も含まれる.

・ヒトの免疫系は獲得免疫系と自然免疫系に大別される.獲得免疫系にはT細胞による細胞性免疫,B細胞による液性免疫が含まれる.自然免疫系では好中球,食細胞,NK細胞,補体系が主体となる.

B診断

・IEIの家族歴がある,日和見感染を発症している,明らかに重症感染症が多い,周期性発熱を繰り返している,炎症所見が持続している,などが診断の契機となる.今後は,新生児マススクリーニング発見例が増加する見込みである.

・専門医へすみやかにコンサルトする.

・詳細な病歴聴取と免疫学的スクリーニング検査(血算,白血球分画,リンパ球サブセット,免疫グロブリン値,補体価),感染症の原因検索を行う.各疾患に特異的な機能検査と責任遺伝子変異の同定による確定診断を行う.

◆治療方針

 疾患の病態・症状や重症度に応じて治療法を選択するが,感染予防も重要である.感染対策としては,細菌感染,ウイル

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