診療支援
治療

運動発達の遅れ
motor developmental delay
後藤知英
(神奈川県立こども医療センター・神経内科部長)

頻度 よくみる

ポイント

・運動発達は,粗大運動と微細運動に分けて評価する.

・大まかに,生後6か月で寝返り,1歳で伝い歩き・独り立ち,1歳6か月までに独歩,2歳で小走りが出現すれば粗大運動は正常.7~8か月で第Ⅰ指・第Ⅱ指・第Ⅲ指で物をつかむ(radial grasp),1歳で第Ⅰ指・第Ⅱ指で物をはさんでつまむ(pincer grasp)ことができれば微細運動は正常.

◆病態と診断

A病態

・運動発達は,粗大運動と微細運動に分けて評価を行う.

・粗大運動(gross motor):主に体幹の機能に関連した運動.乳幼児では寝返り,坐位,立位,歩行,の順で大きな運動機能の獲得が進行する.

・微細運動(fine motor):主に手指の細かな機能に関連した運動.乳幼児では物をつかむために手掌全体でつかむ,第Ⅰ指・第Ⅱ指・第Ⅲ指でつかむ(radial grasp),第Ⅰ指・第Ⅱ指でつまむ(pincer grasp),の順で手指の運動機能の獲得が進行する.

B診断

・各月齢・年齢での運動発達の大まかな目安はを参照.

・妊娠・周産期歴(仮死の有無など),家族歴(同様の症状が家系内,特に両親や年長の同胞にもあるか),知的発達症の有無,筋力や筋緊張の低下あるいは亢進の有無,左右差の有無,顔貌や身体奇形の有無,低身長や体重増加不良の有無,退行の有無などの情報についても,問診や診察で確認する.

・運動発達の遅れをきたす疾患として,脳性麻痺,先天性筋疾患(筋ジストロフィー,ミオパチー),ミトコンドリア病などの先天性代謝異常症,染色体異常症,脳形成異常症,脊髄性筋萎縮症などがある.

・原因は非常に多岐にわたり,また近年の医学の進歩により治療可能となった疾患もある(脊髄性筋萎縮症など)ので,明らかな遅れがある場合は頭部画像検査,血液検査など原因検索を行うか,小児神経科医のいる医療機関や小児専門医療機関に紹介する.特に左右

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