診療支援
治療

言葉の遅れ
language delay
丸山幸一
(愛知県医療療育総合センター中央病院・小児神経科部長)

頻度 よくみる

治療のポイント

・基礎疾患を見逃さないようにする.

・1歳6か月で有意語なく言語指示に従えない,3歳で二語文なく簡単な質問に答えられない場合は精査を依頼する.

◆病態と診断

A病態

・「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」における言語症は,語彙・構文・話法の習得に基づく言語理解や言語表出の獲得が年齢に対して期待される段階まで達せず,言語の使用に持続的な困難があり,コミュニケーションや社会活動に制限をきたす状態を指す.

・従来は表出性言語発達遅滞(理解はよいが発語が遅れる)と受容-表出混合性言語発達遅滞(理解・発語とも遅れる)に分類されていたが,DSM-5から単一分類に改められた.ただし,下記1)~4)の疾患による場合は言語症と診断しない.

 1)聴覚障害:伝音性難聴は外耳や中耳における音振動の伝達の障害で,外耳道閉鎖や耳小骨奇形などの先天異常,中耳炎などが原因となる.感音性難聴は内耳および聴覚伝導路の障害で,遺伝性難聴や先天感染などが原因となる.近年は新生児聴覚スクリーニングによる先天性難聴の早期発見が試みられている.

 2)運動障害:脳形成異常や周産期脳障害に起因する仮性球麻痺,口唇・口腔・舌・咽頭などの構音器官の構造異常などにより,明瞭な発音の習得が困難となる.

 3)知的発達症:知的能力の全般的な遅れにより,言語発達に必要な意味の理解や構音器官の運動発達が妨げられる.

 4)自閉スペクトラム症:他者との情緒的関係や言語的・非言語的コミュニケーションの使用に障害があり,人間関係の構築や社会的状況に沿った行動が困難である.常同運動,同一性へのこだわり,限定された興味への執着,感覚過敏または感覚鈍麻などが特徴的である.言語面では他人が了解できない独特の音声,オウム返し(反響言語),反復的・儀式的な言い回しなどがみられる.

B診断

・言語表出の大まかな目安を以下に示すが

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