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治療のポイント
・痛みの完全な消失にこだわらず,非薬物療法を中心として日常生活への支障を軽減することを目指す.
◆病態と診断
A病態
・疼痛性障害(pain disorder)は,「精神障害の診断・統計マニュアル」の改訂第4版(DSM-Ⅳ)では,「身体表現性障害」の下位分類とされていたが,DSM-5では「身体症状症」の「疼痛が主症状のもの」となった.身体症状症とは,症状を説明しうる他覚的検査所見がないにもかかわらず日常生活に支障をきたすような身体所見を訴えるものを指し,そのなかで主たる症状が「疼痛」の場合,と位置付けられた.なお,成人と比較すると小児の疼痛性障害の報告は少なく,家族集積性があるため,何らかの遺伝的機序の可能性が示唆されている.
B診断
・患者の痛みを説明しうる何らかの身体疾患がないかの鑑別を行う.身体的問題はあったとしても,患者の訴える程度となり得ない場合や検査所見と合致しない場合も含む.
・またDSM-Ⅳの疼痛性障害では,痛みは心理的要因が関与するものであるが,虚偽性障害や詐病のように意図的に捏造されたものではないこと,気分障害,不安障害,精神病性障害などで説明されない,とされる.
・すなわち患者の日常生活に著しい苦痛や支障をきたす痛みを訴えるが,その痛みを説明しうる身体的要因・所見がなく,心理的要因が関与するが他の精神疾患によるものではない,という場合に疼痛性障害と診断する.
◆治療方針
A非薬物療法
非薬物療法が優先される.まずは子どもの痛みの訴えを問診で丁寧に聞く.どんな場面で痛みが出現/悪化するのか,丁寧に尋ねることで子どもがストレスを感じている要因を探る.痛みへの対処の第一歩は気晴らしであり,痛み以外で子どもが気持ちを向けられるものをみつける.また呼吸法によって痛みの自己コントロールを目指す.
ただし強固な痛みを訴える患者のなかには,人生早期からの愛着