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治療

小児の注意欠如多動症(ADHD)
attention deficit/hyperactivity disorder(ADHD)in children
友田明美
(福井大学教授・子どものこころの発達研究センター)

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GL注意欠如・多動症―ADHD―の診断・治療ガイドライン(第5版)(2022)

ニュートピックス

・ADHD児の母親を対象としたペアレントトレーニングの無作為化比較研究では,同プログラムが母親のストレスだけでなく,児の認知機能も改善することがわかった.

治療のポイント

・治療は家族ガイダンス,環境調整などの心理社会的アプローチをまず行う.

・重症の場合,本人や家族のニーズ,薬剤の効果,副作用をみながら薬剤を選択し,慎重に調整をしていく.

◆病態と診断

A病態

・ADHDは,学童期以降によくみられる不注意,多動性・衝動性を主徴とする神経発達症の1つである.年齢に不相応な不注意(集中できない,忘れ物が多い,不注意な間違いが多い),多動性・衝動性(落ち着きがなくじっとしていられない,我慢するのが苦手)が目立ち,それによって日常生活に問題が生じている場合に疑われる.

・ADHDの原因は,大脳皮質におけるカテコールアミン代謝の遺伝的なアンバランスさが主な要因となっているといわれているが,さまざまな環境要因が2次的に関与している可能性がある.

・神経基盤としては,前頭前野,線条体,小脳などの関与が脳画像研究により明らかになってきている.

B診断

・ADHD児の有病率は約5%とされており,男児のほうが女児より多く,その症状は時に成人まで持続する.

・診断基準をに示す.「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版」(DSM-5)より,自閉スペクトラム症(ASD)の併存が認められるようになった.このほか,ADHD児には限局性学習症,反抗挑発症,素行症,不安症,チック症を含むさまざまな疾患が併存することが多い.

・ADHDと確定診断が可能な検査はなく,現在も診断は臨床症状と病歴からなされる.しかし,甲状腺機能亢進症やてんかん,脳腫瘍などの身体疾患を除外する必要があり,必要に応じて,血液検査,脳波検査,頭部MRI

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