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治療のポイント
・治癒する疾患ではないが,経過とともに症状は変動する.
・家族は疲労困憊していることが多く,労う態度で接する.
・周りの人の対応次第で症状が変動しうる.
・環境調整と薬物治療を適切に組み合わせる.
◆病態と診断
A病態
・先天性の脳機能発達の歪みがあると推定されている.
・家族集積性がみられることが少なくなく,双胎児の一致率も高いため遺伝の関与が推定されるが,正確な病因は不明である.
・有病率は1~2%,男児が女児より数倍多い.
B診断
・経過と症状で診断する.DSM-5では,発達早期から①社会的コミュニケーションと対人的相互反応に持続的な問題があること,②行動・興味・活動の限定された反復様式(こだわり行動,感覚過敏・鈍麻)が2つ以上あることの2点が揃うことで診断される.
・他の遺伝学的疾患(レット症候群,ダウン症候群,脆弱X症候群など)でも,自閉スペクトラム症の症状が現れることがある.
・頭部MRI,脳波検査,血液検査などの検査で診断はできない.
・併存症としては,知的発達症(知的障害),限局性学習症(学習障害),運動が不器用〔発達性協調運動症(DCD:developmental coordination disorder)〕,注意欠如多動症(ADHD),不安症,抑うつ症,チック症などがある.また睡眠障害(入眠障害,中途覚醒),てんかんの合併も多い.
・症状は経過とともに変化していく.
◆治療方針
A心理・社会的支援
自閉スペクトラム症を根本的に治療する方法はまだ存在しない.保護者の日々の大変さを認識して治療にあたる.また周囲の人が本人の特性を理解し,環境調整を行い,本人に合った対応を行うことが重要である.
知的発達症が重度ではない場合には,本人が自分の特性を知って行動を変えることにより困難を軽減できる場合がある.本人と周囲の人が肯定的,前向きに対応できればなおよい.
対処法