診療支援
治療

紫外線・赤外線・レーザー光線(非電離放射線)による眼の障害
eye injury by non-ionizing radiation(ultra-violet,infrared,laser beam)
恩田秀寿
(昭和大学主任教授・眼科学)

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治療のポイント

・電磁波を発振する機器は,新しい眼疾患の原因となりうる.

・現病歴と症状から各疾患を推測し早急に治療する.

Ⅰ.紫外線による眼障害

◆病態と診断

A病態

紫外線A(波長320~400nm)のほとんどは角膜で吸収されるため,長時間曝露によって角膜上皮細胞の炎症を広範囲に生じる.

B診断

・紫外線Aに長時間曝露してから数時間後に,激痛を伴って発症する.

・現病歴が重要であり,春スキー(雪眼炎)や海水浴で長時間日光に曝露したり,防護面なしで電気溶接作業(電気性眼炎)をした数時間後に発症する.

・激痛のため眼を開けられないことが多い.点眼麻酔後の細隙灯顕微鏡検査およびフルオレセイン生体染色で,高度の結膜充血とびまん性表層角膜炎を認める.

◆治療方針

 激痛のために救急搬送されることが多いが,特効薬はない.眼軟膏を点入して閉瞼することにより数時間で症状が緩和する.開瞼できるようになれば点眼を開始する.

Px処方例 開瞼不可能な場合は1)を,可能な場合は2)を用いる.

1)オフロキサシン(タリビッド)眼軟膏 両眼に点入ののち眼帯 1日3回

2)ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアレイン)点眼液(0.1%) 両眼に1回1滴 1時間ごと

Ⅱ.赤外線による眼障害

◆病態と診断

A病態

近赤外線(波長700~2,500nm)のほとんどは角膜と水晶体で吸収されるため,長期間曝露すると水晶体に混濁を生じる.

B診断

・矯正視力の低下と,細隙灯顕微鏡所見で水晶体混濁を認めれば,白内障と診断できる.

・ガラス工事業者,溶鉱炉従事者,電気溶接工事業者に多く,年単位で進行する.

◆治療方針

 視力低下が日常生活に支障をきたしていれば,白内障手術を行う.

Ⅲ.レーザーによる眼障害

◆病態と診断

A病態

・レーザーが眼内に照射されると網膜が熱凝固され不可逆的な網膜変性が生じる.

・レーザーの種類,出力や波長,照射時間によって重症度は

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