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治療のポイント
・裂孔原性網膜剥離では,早期発見と手術による原因裂孔の閉鎖が重要であり,片眼に急な飛蚊症や霧視,視力低下が起こった場合,早急に眼科医へのコンサルトが必要である.
・牽引性網膜剥離では,手術で増殖組織による網膜牽引の解除を完全に行う.
・滲出性網膜剥離では,原因検索のための検査と原因疾患に応じた治療が必要となる.
◆病態と診断
A病態
・網膜剥離の病態で最も多くみられるのが,網膜に形成された裂孔を経由して硝子体液が網膜下へ流入して発生する裂孔原性網膜剥離である.
・ほかに,増殖糖尿病網膜症などで眼内に形成される増殖組織による網膜牽引が原因となる牽引性網膜剥離,原田病などのぶどう膜炎や眼内腫瘍が原因で網膜血管または網膜色素上皮のバリア破綻が生じ,網膜下に滲出液が貯留する滲出性網膜剥離がある.
B診断
・裂孔原性網膜剥離の場合,飛蚊症や急激に拡大する視野欠損で発症することが多い.緩徐に進行する場合は,黄斑部網膜へ剥離が拡大して視力低下をきたすまで気づかれないこともある.
・散瞳下の眼底検査で網膜剥離の存在が確認でき,裂孔原性では原因となる網膜裂孔が存在する.牽引性では網膜上または網膜下に増殖組織が存在する.
・硝子体出血などで眼底が観察できない場合は,Bモードエコーにより網膜剥離の存在が確認できる.
・滲出性の場合,蛍光眼底造影検査により網膜血管や網膜色素上皮層のバリア破綻部位の蛍光漏出がみられる.
◆治療方針
裂孔原性網膜剥離は多くの場合,早急に手術治療が必要である.手術には主に2つの方法があり,強膜バックリング手術は網膜裂孔を強膜側から冷凍凝固またはジアテルミー凝固し,網膜下液が多量の場合は眼外へ排液したあと,シリコン材を強膜へ縫着して眼球を内陥させて網膜裂孔を閉鎖する.硝子体手術は硝子体腔内で硝子体を切除し,網膜下液を吸引して排液するとともに気体を注入して網膜を復位