診療支援
治療

外傷性鼓膜穿孔
traumatic tympanic membrane perforation
水足邦雄
(防衛医科大学校准教授・耳鼻咽喉科学)

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ニュートピックス

・2019年に鼓膜穿孔に対する鼓膜再生療法が世界に先駆けて日本で保険収載され,良好な使用成績が得られている.適切に実施すれば,約90%の症例で鼓膜穿孔の閉鎖が得られる.

治療のポイント

・鼓膜の自然閉鎖を期待し,まず保存的治療を選択する.感染が危惧される場合や感染が生じる場合は直ちに抗菌薬治療を開始する.

・感染がなければパッチによる外来での鼓膜穿孔閉鎖を行う.

・3か月以上の穿孔残存例に対しては鼓膜再生療法を行う.鼓膜再生の無効例や耳小骨連鎖の離断例では,鼓膜形成術や鼓室形成術を考慮する.

◆病態と診断

A病態

・外傷性鼓膜穿孔は,①耳かきや綿棒などによる直接外力,②耳への平手打ちや爆風などにより引き起こされる間接外力,の2つの原因によって生じる.

・交通事故や転落などの側頭骨骨折時には,骨折線の延長上に鼓膜穿孔や耳小骨離断が生じることもある.

・外傷性鼓膜穿孔では受傷直後にほぼ全例で耳閉感を呈するが,難聴は訴えない場合もある.外傷後に耳閉感を訴えた症例では,必ず鼓膜の観察をする必要がある.

B診断

鼓膜の視診(拡大耳鏡,顕微鏡,内視鏡のいずれでも)で容易に診断可能である.

・純音聴力検査では一般に低音域の軽度伝音難聴を生じる.穿孔の大きさや場所によってはほとんど難聴が生じないこともある.

・中等度以上の難聴が認められる場合,感音難聴を併発している場合には,CTにて耳小骨連鎖離断や内耳損傷の診断が必要となる.

◆治療方針

 一般に外傷性鼓膜穿孔は感染さえなければ80%以上の症例で自然閉鎖が期待できる.耳小骨連鎖離断や内耳障害のない症例では保存的治療を先行することが基本となる.

A保存的治療

 拡大耳鏡にて鼓膜穿孔や感染の有無を確認するが,必要であれば顕微鏡下に凝血塊の除去や内視鏡による詳細な観察を行う.穿孔の辺縁がめくれ上がっている場合には,丁寧に顕微鏡下で復位させる.

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