診療支援
治療

真珠腫性中耳炎
cholesteatoma
白馬伸洋
(帝京大学医学部附属溝口病院教授・耳鼻咽喉科)

頻度 あまりみない

GL小児滲出性中耳炎診療ガイドライン 2022年版

治療のポイント

・真珠腫性中耳炎には,後天性,先天性,2次性の3種類があり,それぞれの発症機序は全く違う.

・診断には,①内視鏡や電子スコープを用いた鼓膜の詳細な観察,②聴力検査,③CT検査,が必要である.難聴,耳閉感,耳漏,耳痛やめまい,顔面神経麻痺などの症状があれば耳鼻咽喉科受診を勧める.

◆病態と診断

A病態

・後天性真珠腫は,慢性副鼻腔炎,アレルギー性鼻炎,耳管開放症による鼻すすり癖,また,アデノイド増殖症による耳管孔の閉塞,さらに,口蓋裂,ダウン症などによる耳管機能障害が関与する.中耳腔内圧が低下することで,鼓膜の一部に陥凹が生じ,陥凹部に侵入した扁平上皮から分泌された角化物が蓄積され真珠腫を形成する.

・先天性真珠腫は,胎生期に中耳腔内に迷入した扁平上皮から分泌された角化物が蓄積して形成される.

・2次性真珠腫は外傷や繰り返す中耳炎などにより,鼓膜穿孔の穿孔縁に巻き込まれた扁平上皮から分泌された角化物が蓄積して形成される.

B診断

・「①内視鏡や電子スコープを用いた鼓膜の詳細な観察」において,後天性真珠腫では鼓膜の一部の陥凹所見や陥凹部の角化物蓄積所見,また,真珠腫による外耳道の破壊所見が認められる.先天性真珠腫では鼓膜は正常なことが多いが,鼓膜を透見して真珠腫が形成した白色塊が認められる.2次性真珠腫では鼓膜穿孔縁で扁平上皮が巻き込まれるため,穿孔が不整であったり,穿孔縁の重なり合いが認められる.

・「②聴力検査」では,真珠腫が耳小骨を破壊することによる伝音難聴や,蝸牛障害による感音難聴が認められる.

・「③CT検査」では,真珠腫による中耳腔の異常軟部陰影,外耳道骨や耳小骨の破壊像が認められる.また,MRIの拡散強調画像が真珠腫の鑑別に有用である.

◆治療方針

 真珠腫を鼓室形成術により遺残なく全摘出することと,摘出後

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