診療支援
治療

耳硬化症
otosclerosis
菅原一真
(山口大学大学院准教授・耳鼻咽喉科学)

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ニュートピックス

・軽量でMRIにも対応するチタン製ピストンの国内承認が期待されている.

治療のポイント

・緩徐に進行する伝音難聴を呈する.

・気骨導差が30dB以上の症例では手術療法(アブミ骨手術)が難聴の改善に有効だが,きわめてまれに術後合併症として感音難聴をきたすことがある.

・補聴器による聴力の改善も得られることから,治療方針の決定については患者とよく相談する必要がある.

◆病態と診断

・耳硬化症は,耳小骨のアブミ骨の可動性が徐々に制限され,進行性の難聴を生じる疾患である.欧米人に多い疾患とされるが,女性に多く,妊娠・出産をきっかけに進行する例が多い.

・難聴の診断には標準純音聴力検査が行われ,低音域に,より大きな気骨導差を認めるstiffness curveを示すことが多く,進行すると骨導閾値も上昇し,混合性難聴となる.

・ティンパノグラムでは耳小骨の可動性の低下を反映してAs型を示すとされる.

・耳部CTでは初期には異常を認めないが,進行例では側頭骨の卵円窓前方や蝸牛周囲に骨透亮像を認め,double-ringサインとよばれる.

◆治療方針

 手術が有効である.顕微鏡ないしは内視鏡で鼓室内を観察し,アブミ骨を観察する.アブミ骨の固着が確認できれば,アブミ骨の上部構造を摘出し,アブミ骨底板に内耳への小孔を作成する.ピストンとよばれる人工耳小骨を挿入し,キヌタ骨長脚に接続して,手術を終了する.これによって耳小骨の振動がピストンを介して内耳に伝達されることで聴力が改善する.国内承認されているピストンはテフロン製のピストンとステンレス製のワイヤーピストンがある.どちらも使用できるが,ワイヤーピストンは高磁場のMRIの使用に制限が生じる可能性がある.手術成績は一般的に良好だが,まれに術後感音難聴のため聴力が低下する症例が報告されている.気骨導差が大きくない症例では,アブミ骨を操

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