頻度 あまりみない
GL頭頸部癌診療ガイドライン2022年版
治療のポイント
・国内のガイドラインにおいても国外のガイドラインにおいても,治療の主体は外科的切除である.
・術後補助療法として高用量シスプラチンを用いた化学放射線療法が行われる.
・本邦の多施設共同研究では,超選択的動注化学放射線療法による良好な治療成績が報告されている.
・進行癌では眼球合併切除や開頭が必要となることがある.
◆病態と診断
A病態
・上顎洞粘膜から発生した扁平上皮癌が大半を占める.
・上顎洞は周囲を骨に囲まれた空間であり,骨破壊をきたして周囲に進展して初めて症状が出現するため,大半の症例が進行癌として発見される.
・進展方向により症状は異なってくる.前方では頬部腫脹,後方では開口障害,内側では鼻閉・鼻出血,上方では複視・眼球突出,下方では歯肉腫脹・出血などである.
B診断
・CT,MRIなどで上顎洞を占拠する病変を認める.骨破壊を伴う場合が多い.最終的には生検によって確定診断に至る.
◆治療方針
治療の主体は外科的切除となる.しかし,進行癌が大半であるため,手術単独で根治を目指すことはむしろ少なく,放射線療法,化学療法を組み合わせた集学的治療が行われることが多い.
上顎洞癌の手術の基本形は上顎全摘術である.本術式では顔面に皮膚切開が必要であること,術後顔面の変形などの整容面の問題が生じうること,摂食障害などの機能障害が生じうることなどを考慮して治療方針を決定する必要がある.腫瘍の進展範囲に応じて,上顎部分切除術,上顎全摘術(眼窩底骨,硬口蓋を含む上顎骨全体を切除する),上顎拡大全摘術(上顎全摘術と同時に眼球および眼窩内容も合併切除する),頭蓋底郭清術(保険術式名では広範囲頭蓋底手術で,頭蓋底の骨も合併切除する)がある.上顎全摘術以上の手術では通常,遊離組織移植による再建術が必要となる.術後補助療法としては高用量シスプラチ