頻度 よくみる
GL形成外科診療ガイドライン 2 2021年版
Ⅰ.眼窩壁骨折
治療のポイント
・眼球運動障害あるいは眼球陥凹が残存する症例は手術での再建が必要である.
・眼窩腫脹改善後に眼球運動と眼球陥凹について評価し,手術の要否を決定する.
・緊急手術を要する病態があり,疑わしい所見を認める場合は可及的すみやかに専門医に紹介する.
◆病態と診断
A病態
・骨折部位が吹き抜けた開放型骨折と,一度吹き抜けたあとに骨片がトラップドア状にもとの位置に戻る閉鎖型骨折がある.
・骨折部位に眼窩内容物が嵌頓あるいは癒着することで眼球運動障害が生じる.
・眼窩から内容物が逸脱することで眼窩内容が減少し,眼球陥凹が生じる.
・若年者では骨が柔軟なため閉鎖型骨折の割合が成人に比べると多い.逸脱した眼窩内容物がトラップドア状となった骨折部に絞扼され阻血となり,短時間で不可逆的障害に至る.
B診断
・眼窩の紫斑と腫脹や結膜下出血などの所見を認める場合に本疾患の存在を疑う.
・閉鎖型骨折では,眼窩の紫斑や結膜下出血の所見は軽微なことが多い.
・嘔吐や体動不良を呈し,特に眼球運動時に症状が増悪する場合は,眼窩内容物の絞扼による刺激によって生じた眼心臓反射が疑われる.
・CTで骨折の有無を確認する.ウィンドウレベルを軟部組織条件とすると,眼窩脂肪と鼻副鼻腔粘膜との鑑別が容易となる.
・CTで外眼筋が眼窩内で追跡できないmissing rectusとよばれる病態では,外眼筋がトラップドア状になった骨折部に完全に絞扼されており最重症である.
・MRI cine mode撮影で,眼窩脂肪織や外眼筋の機能的評価が可能である.
・Hess赤緑試験で眼球運動の左右差を,Hertel眼球突出計で眼球陥凹を評価する.
◆治療方針
A非緊急症例
開放型骨折と閉鎖型骨折のうち眼心臓反射やmissing rectusを認めないものは,眼窩腫脹が改善した段階で眼球運