診療支援
治療

摂食・嚥下障害患者のリハビリテーション
rehabilitation for dysphagia
藤本保志
(愛知医科大学教授・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)

GL嚥下障害診療ガイドライン2018年版

治療のポイント

・嚥下障害患者が直面する2つ(肺炎予防と栄養摂取)の観点を重視する.

・リハビリテーションは機能回復を目指した訓練のみを意味しない.代償的な栄養摂取方法や食事形態の工夫,社会的な対応も含めて対応する.

・嚥下指導において,姿勢調整など環境を整備することも安全性を高める.

・段階的摂食訓練として嚥下調整食のステップアップの過程では栄養摂取が不足しがちであり,補助栄養も重視する.

・言語聴覚士,看護師,栄養士らの多職種連携,耳鼻咽喉科・脳神経内科・リハビリテーション科・歯科などの多科連携が有用である.

◆病態と診断

A病態

・嚥下に関連する筋群とその支配神経である下位脳神経(Ⅴ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ,ⅩⅠ,ⅩⅡなど)の評価,嚥下反射気道防御反射喀痰排出能力などの評価をもとに訓練計画を立てる.

・基礎疾患の状態や予後予測,加齢の影響や認知レベル,家族の介護力や摂食への意欲なども把握する.

B診断

・スクリーニング検査(簡易検査)に続く嚥下造影検査嚥下内視鏡検査により,病態や訓練法の効果を確認できる.前述の病態診断を基にしてリスク評価,栄養状態の評価,嚥下機能の評価を行い,リハビリテーション計画を立案する.

◆治療方針

A嚥下指導

 患者あるいは家族,介護職員を対象に行われる.食事に集中しやすい環境整備を促す.円背で下顎が突出している場合など,リクライニング姿勢時の頸部の位置などの調整,体幹維持などの調整が摂食・嚥下の安全性を高める.また,食器や食事形態の工夫などの指導も行う.

B嚥下訓練

 食物を用いない間接訓練(基礎訓練)と実際の食物を用いる直接訓練に分けられる.考え方としては,機能回復を目指すアプローチと代償的なアプローチに分けられる.

1.間接訓練

 食物を用いないため重症例でも行うことができ,廃用予防にもなる.頸部の可動性や呼吸,痰の排出の改善に始まり,開

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