診療支援
治療

喉頭摘出患者のリハビリテーション
rehabilitation of patients with laryngectomy
四宮弘隆
(神戸大学大学院特命准教授・耳鼻咽喉科頭頸部外科学)

治療のポイント

・喉頭摘出により音声機能は喪失し,嗅覚や肺機能も低下するため,音声リハビリテーションのみならず,呼吸器や嗅覚リハビリテーションも重要となる.

◆病態と診断

・喉頭全摘術は,進行した頭頸部癌(喉頭癌,下咽頭癌など)や高度の嚥下障害患者に対して行われる.

・気管は頸部の皮膚に縫合され,永久気管口が作製される.気管(気道)と食道(食物路)は完全に分離される.

・発声機能の喪失,気道の加湿や加温機能の喪失,浄化機能の低下,嗅覚機能の低下が生じるため,音声・呼吸器・嗅覚リハビリテーションを要する.また日常生活の工夫や福祉サービスの利用なども重要となる.

◆治療方針

A音声リハビリテーション

 喉頭摘出後の代用音声には大きく分けて3つの方法があり,個々の患者に適した方法を指導する.

1.電気式人工喉頭

 ボタンを押すと振動する器具を頸部に押し当てることで,振動が口腔に伝わり,話したい言葉に合わせて口を動かすことで発声する方法である.術後早期から使用可能で,習得も容易であるが,機械的な音声となる欠点がある.日常生活用具給付の対象となっている.

2.食道発声

 食道内へ空気を送り,その空気を吐き出すことで,残存する咽頭付近の粘膜が振動し発声する方法である.器具を要さず発声可能であるが,習得するのに数か月を要し,習得困難な場合もある.一息での発声が短く,滑らかな発声には習熟を要する.

3.気管食道シャント発声

 ボイスプロステーシスという一方弁の入ったチューブを気管と食道の間に留置し,肺の呼気を食道側に送り,残存咽頭粘膜を振動させて発声する方法.呼気を用いた発声であり,発声の持続時間が長く,習得も容易で,高い音声獲得率が得られる.ただし定期的な器具の交換を要し,日常的な手入れを必要とする.

B呼吸器リハビリテーション

 本来鼻腔が果たしていた加湿や加温,浄化の機能が失われるため,下気道を守る処置を要する.2

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