Ⅰ.齲蝕
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GLう蝕治療ガイドライン 第2版(2015)
◆病態と診断
A病態
・齲蝕は,口腔内に存在する細菌が炭水化物を代謝して生じる酸により,歯の表層が溶けることが原因で生じる感染性疾患である.齲蝕の原因因子は歯の表面にプラークが存在すること,ミュータンスレンサ球菌やラクトバチルスなどの細菌が存在することである.
・表層のエナメル質部に齲蝕が生じ,齲蝕によって生じた齲窩が徐々に深くなりエナメル質下の象牙質,その後歯髄まで進行していく.象牙質はエナメル質と比較して有機質の割合が多いため,齲蝕が象牙質部分に到達すると進行速度が上がる.
・エナメル質部分に限局した齲蝕では疼痛はないが,歯の表面が濁った白色を呈する.象牙質部分に齲蝕が生じると齲窩に加え,象牙質の象牙細管を介して歯髄に刺激が伝わり疼痛を生じる.象牙質に到達した齲蝕では,冷たいものがしみるなどの臨床症状が生じ,歯髄まで到達した際には,自発痛を生じることが多い.
B診断
・診断には,視診,X線撮影,光による透照診,光学式齲蝕検知装置による診査が挙げられる.齲蝕部は脱灰を生じているためX線写真上では黒く映り,透照診では齲蝕部は変色により区別することができる.光学式齲蝕検知装置では齲蝕部の数値が上昇することで判別できる.
◆治療方針
初期齲蝕は実質欠損がなく,エナメル質表面の白濁を生じている.この状態であれば,フッ化ナトリウムを用いることで再石灰化を期待することができる.齲蝕は自然には治癒せず,齲窩は一度生じると修復治療,補綴治療を行って修復するしかない.そのため,感染歯質を除去し,コンポジットレジンやセラミック,金属を用いた充填処置や補綴処置にて対応する.
A予防
齲蝕予防に効果があるとされているのが,歯面清掃とフッ化ナトリウムの使用である.歯面清掃はプラークの除去が目的であり,細菌の栄養源を減らすことで酸産生を減らす.また,