診療支援
治療

口腔の先天異常と口唇裂・口蓋裂
congenital orofacial anomaly,cleft lip and/or palate
夏目長奈
(愛知学院大学歯学部・口腔先天異常学)

治療のポイント

・口腔の先天異常は外表奇形のなかで最も頻度が高く,その代表疾患である口唇裂・口蓋裂は多面的な問題を抱える疾患である.

・症候性の発症の場合には全身的な合併症を伴う場合も多く,小児科の介入が必要となる.

・治療は口腔外科医などが行う手術のほかに,言語聴覚士による言語・口腔機能への介入,歯科医師による矯正歯科治療,補綴・インプラント治療などが並行して成人に至るまで行われる.

・患者本人と家族への心理的配慮やケアなども含め,長期的な経過観察が必要となる.

◆病態と診断

A病態

・口唇部に披裂がみられるものを口唇裂,口蓋部に披裂がみられるものを口蓋裂とよび,この2つを合併した場合に口唇口蓋裂とよぶ.

・口唇・口蓋裂は,日本ではおよそ500人に1人の割合で発生し,先天異常のなかでは非常に多い疾患である.

・裂形別の割合は口唇裂34.5%,口唇口蓋裂45.0%,口蓋裂20.5%である.口唇裂,口唇口蓋裂は男性に多く,口蓋裂は女性に多い.また,片側裂は両側裂よりも多く,左側裂がより多く発生する.

・顔面の発生段階において,口唇が形成されるのは胎生6~8週,口蓋は9~10週頃である.この時期に突起の癒合不全が生じると口唇・口蓋裂が発生する.

・原因は明らかではなく,環境的因子(事故,感染,薬品,嗜好品,精神的ストレスなど)と遺伝的要因が合わさり一定の閾値を超えた場合に発生する,多因子しきい説の考えが有力である.

B診断

・口唇裂・口蓋裂は視診にて,披裂の部位により両側性・片側性,形態により完全・不完全が付記される.

◆治療方針

A出生前診断

 現在,超音波検査により口唇裂は比較的正確に産科で診断できるようになり,出生前から専門医にて両親への心理的配慮,治療のオリエンテーション,哺乳指導が開始される.

B初診~口唇形成術前

 哺乳障害を改善するため,出生後すぐに哺乳指導,哺乳床(Hotz床)の装着を行う.また,

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