治療のポイント
・正常な言語獲得のためには,低年齢時の早期発見,早期治療が不可欠である.
・口腔内診査と,音声言語の聴覚判定が大切である.
・疑問に思ったら専門医に対診する.
◆病態と診断
A病態
・先天性鼻咽腔閉鎖不全症とは,明らかな口蓋裂がないにもかかわらず,開鼻声や声門破裂音といったいわゆる口蓋裂言語を主症状にもつ疾患の総称である.
・22q11.2欠失症候群は先天性鼻咽腔閉鎖不全を高率に合併することが知られている.
・その他の臨床症状として低身長,合併症として心臓疾患,知能発達の遅れがある.
B診断
1.音声言語の聴覚判定
・聴覚的に,開鼻声や呼気鼻漏出による子音の歪み,構音障害(鼻咽腔閉鎖不全に関連する子音の弱音化,声門破裂音,咽頭破裂音,咽頭摩擦音)の有無を判断する.
2.吹き出し検査
・顔の前にティッシュを置き,息を吹きかけてティッシュが動くかどうかを見る.鼻息鏡があれば呼気鼻漏出の程度を測定する.
3.口腔内診査
・「ア~」と発声させながら舌圧子で舌を下方に圧排し,咽頭後壁の状態,軟口蓋の後上方への吊り上がりや,左右対称の動きであるかを見る.
・口蓋垂裂・軟口蓋正中部の筋層欠如による透過性・硬口蓋正中部から軟口蓋部へと指を滑らせる触診にて,後鼻棘の消失(いわゆるCalnanの三徴)を認めたなら,粘膜下口蓋裂であるので鑑別が必要である.上記の器質的所見がなく咽頭後壁までの距離が長い(deep pharynx),軟口蓋が短い(short palate),軟口蓋麻痺(palatal paralysis)や軟口蓋の可動性の低下または左右非対称などの所見があれば,先天性鼻咽腔閉鎖不全症を疑う.
4.側方頭部X線規格写真
・安静時,/a/発声時,/i/発声時の側方頭部X線規格写真3枚を撮影比較し,軟口蓋の長さや運動の大きさ,咽頭後壁との接触状態を確認する.
5.鼻咽腔ファイバースコープ
・軟口蓋・咽頭後側壁の