診療支援
治療

歯の破折,顎骨(顎顔面)骨折
fracture of teeth and maxillofacial bones
三宅 実
(香川大学教授・歯科口腔外科学)

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治療のポイント

・歯の破折では,破折の部位や深さ,歯の神経(歯髄組織)が露出しているかを正確に診断することが必要である.

・顎骨骨折では,口腔内および周囲組織損傷に伴う腫脹・出血や骨片の偏位による気道閉塞には厳重な注意を要する.緊急気道確保が必要になることもある.

・脱臼歯は,再植できる可能性もあるので,汚染や乾燥に注意し医療機関をすみやかに受診してもらう.

・顎顔面骨折では,審美的な改善のみならず,咬み合わせ(咬合)の回復も重要な治療目標である.

◆病態と診断

A病態

・1~2歳児の転倒に伴う歯の損傷,学童期での歯の外傷の頻度は高い.顎顔面骨折の原因は交通事故が多く,20代の若年者に多い.その他の原因としては転倒や転落,スポーツ,作業事故,喧嘩による殴打などがあり,生理機能が低下する老年期では転倒の割合が増加する.

・顔面骨では,下顎骨の骨折の頻度が高い.外力が加わった部位での直達骨折,また顎関節突起部は構造的に脆弱であり,介達骨折を生じることが少なくない.症状としては,腫脹,疼痛,顔面の変形,出血,咬合のずれ,口を開けることや閉じることができない,などがある.骨折の位置により開閉口で骨片が動く.また下顎骨体部の骨折では,下歯槽神経管の損傷により,オトガイ・下口唇の知覚鈍麻・麻痺を認めることが特徴的な所見である.

B診断

・X線画像検査をすみやかに実施する.歯・顎を観察することができるパノラマX線撮影,顎関節部の単純撮影(シュラー法やオルビトラムス法)が使われる.

・顎顔面骨折では,精密な評価・診断ができるCT撮影が必須である.3D-CT画像は,顎顔面骨折の3次元的評価に有用である.また歯槽骨・歯根などの硬組織の損傷の評価に,分解能の高い歯科用CT(コーンビームCT)は有用である.

・歯科用デンタルX線検査は,解像度が高く,亀裂が入っている歯根破折や歯槽骨骨折の評価に使用される.

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