診療支援
治療

口腔機能低下症と摂食嚥下障害
oral hypofunction and dysphagia
井上 誠
(新潟大学大学院教授・摂食嚥下リハビリテーション学)

頻度 よくみる(対象は50歳以上)

ニュートピックス

・平成30(2018)年度に保険収載された口腔機能低下症の当初の対象年齢は65歳以上であったが,令和4(2022)年度より50歳以上に引き下げられた.

治療のポイント

・口腔機能低下症とは,咀嚼を中心とする歯科領域の機能低下を示す歯科疾患名である.

・口腔機能低下症の対象年齢層は高齢者のみではなく,50歳以上である.

・口腔機能の低下が疑われる場合は,すみやかに歯科医に検査・診断を依頼する.

・口腔機能の低下は摂食嚥下障害の増悪因子となりうることを念頭におく.

・口腔機能低下症診断のための検査項目やカットオフ値の見直しが必要となっている.

・口腔機能低下症は歯科における検査によって診断され,歯科治療とともに定期的な機能管理を行って半年ごとに再評価を受ける.摂食嚥下障害が疑われた場合は,すみやかに専門診療科(歯科,耳鼻咽喉科など)に紹介し精査を受けるが,本項では詳細を省略する.

◆病態と診断

A病態

1.口腔機能低下症

・2016年に日本老年歯科医学会が提唱した口腔機能低下症とは,オーラルフレイルの最終段階とされる口腔機能障害に陥る前の,口腔機能管理により機能改善が可能な可逆的段階と定義される.

・加齢とともに口腔への関心度が低くなることで,齲蝕や歯周病といった歯科疾患が進行し,滑舌低下,食べこぼし,噛めない食品の増加などを主症状とするオーラルフレイルが認められてくる.

2.摂食嚥下障害

・食事中や食後のむせ,食欲減退,食後の胸のつかえ感などを主訴とする.結果として,定期的な発熱や(嚥下性)肺炎のほか,体重減少,栄養不良につながる.

B診断

1.口腔機能低下症

・検査項目は,口腔衛生,口腔乾燥,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧咀嚼機能,嚥下機能の7つである.このうち指定された検査機器を用いる咬合力,舌圧,咀嚼機能の1つ以上と,ほかも合わせて合計3つ以上に機能低下

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