診療支援
治療

口腔乾燥症(ドライマウス)
xerostomia,dry mouth
和田尚久
(九州大学大学院歯学研究院教授・総合診療歯科学)

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治療のポイント

・日常生活指導として,口腔清掃,うがい,保湿が基本であり,ほかに唾液腺マッサージやマスク着用などが有効である.

◆病態と診断

A病態

・口腔内の水分減少によって直接的・間接的に起こる,一連の口腔内の不快な症候.

・全身性の疾患では,糖尿病,腎障害,貧血,脱水などの場合に生じる.

・神経性ではストレス,抑うつなど,薬物性のものでは抗不安薬,抗うつ薬,降圧薬,抗パーキンソン薬などによる副作用で生じる.

・唾液腺の機能障害としては,加齢,放射線照射,唾液腺炎,シェーグレン症候群などが原因となり生じる.

B症状

・口腔乾燥に伴い,口腔粘膜の灼熱感,舌痛,口腔粘膜の発赤,舌乳頭の萎縮による平滑舌や溝状舌,口腔粘膜炎,味覚障害,咀嚼・嚥下障害や義歯不適合などの症状が,また自浄作用の低下により齲蝕・歯周病の進行や口臭などの症状が現れる.

口腔カンジダ症を併発しやすい.

C診断

・問診にて全身疾患の有無と常用中の薬剤を確認し,口腔粘膜の状態,齲蝕,歯周病の進行,義歯の状態などの口腔内の診査後に唾液分泌量を測定する.

シェーグレン症候群が疑われる場合は,1999年の厚生省診断基準に従い,口唇生検,唾液腺造影,唾液腺シンチグラム,涙腺検査,血清学的検査を行う.

◆治療方針

A原因療法

 原因疾患の治療を行う.薬物の副作用が推測される場合では,薬物の中止もしくは減量を検討する.

B対症療法

 シェーグレン症候群,放射線照射,加齢などが原因で,治療や原因の除去が不可能・困難な場合には対症療法が必要になる.

1.日常生活指導および口腔衛生指導

1)口腔清掃:自浄作用の低下により汚染された口腔内の清掃.

2)うがい:口腔内の汚染物の洗浄と不足した水分の補給.

3)保湿:口腔内の水分の保持と粘膜の保護.ジェル状,スプレー,洗口液のタイプの保湿剤が市販されている.

4)唾液量の増加促進:唾液腺マッサージ,粘膜マッサー

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