診療支援
治療

口腔習癖
oral habits
向山 仁
(横浜市立みなと赤十字病院・歯科口腔外科部長)

A口腔習癖とは

 習癖とは,日常の正常な運動であっても,無意識のうちに習慣的に繰り返されることによって,何らかの問題を起こす運動のことをいう.それらのうち口腔に関連して,長年にわたり長時間起こることによって,口腔組織,歯周組織に障害をもたらすものを口腔習癖という.これらによって,歯列,歯周組織,顎顔面骨,咀嚼,嚥下,発音,呼吸などの機能に影響を及ぼすことがある.

B幼児・学童期にみられる口腔習癖

 主にみられるものには拇指吸引癖(指しゃぶり),舌突出癖(舌を前に出す),吸唇癖(唇を吸う),咬唇癖(口唇を噛む,タオルなどの場合もある)などがある.これらは乳児期には生理的なものとして,臨床的に問題となることは少なく,成長に応じて徐々に消失していく.4歳を過ぎて行っていると歯列不正(歯の叢生,歯列異常)や,開咬,上顎前突の原因となる.そのため,ほかのことに気を向かせるなどして,やめさせることが望ましい.なかなかやめられない場合などでは,原因となる背景の探索に小児科や小児歯科などの受診が必要となる.

C成人・高齢者にみられる口腔習癖

 成人高齢者の口腔習癖として最も臨床上問題となるのはブラキシズムである.ブラキシズムは,睡眠中あるいは覚醒中に起こる反復性の咀嚼筋活動と定義されており,歯の接触を伴うもの,下顎を前に出したりするものや,咀嚼筋を強直させるものなどがあり,必ずしも噛みしめや歯ぎしりを伴うものではない.また,この定義に示されるように,睡眠中に起こる睡眠時ブラキシズムと日常の生活活動時に起きる覚醒時ブラキシズムに大別される.顎関節症の発症因子,歯周疾患の増悪因子であるとともに,歯の咬耗,歯根破折,補綴装置の破損,デンタルインプラント適応制限などに影響し,日常生活や診療を行ううえで障害となることが多い.

1.睡眠時ブラキシズム

 睡眠時ブラキシズムは,睡眠障害国際分類第2版(2005)で睡眠

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?