治療のポイント

・認知症の早期診断は，疾患修飾薬などの開発に伴いますます重要となる．

・初期のうちに，アドバンス・ケア・プランニング（ACP：advance care planning）について，本人・家族とともに話し合っておく必要がある．

・あらゆる認知症の行動・心理症状（BPSD：behavioral and psychological symptoms of dementia）には本人なりの理由があると考えていたほうが，認知症の人を理解できる．

・自分がされて嫌だと思うことはしない，という付き合い方の基本は，認知症の人に対しても同じである．

・認知症のケアは家族の負担も重いことがあり，医療・介護スタッフの力を借りて無理をしないことも大切である．

A正常老化・境界領域のケアのポイント

　この時期は，認知症ではないが，自身が認知症になるのではないかと不安を抱き，抑うつ状態になることもあり，医療機関の受診に至る．昨今では，認知症の早期診断の重要性が認識されつつあり，主観的認知機能低下（SCD：subjective cognitive decline）または軽度認知機能障害（MCI：mild cognitive impairment）レベルの患者が受診することは年々増加している．

　認知症初期の可能性の有無を見定めるために，血液検査を含めた全身状態のチェックに加えて，神経心理学的検査および頭部MRI検査などの形態画像検査，脳血流SPECT検査などの機能画像検査を行う．

　すでに認知症と診断できる場合はコリンエステラーゼ阻害薬などの薬物治療導入も考慮するが，SCDまたはMCIにとどまっている場合には，外来での定期的なフォローをしていくことが重要なケアとなる．また，近い将来抗アミロイドβ抗体薬などの疾患修飾薬が上市される可能性があり，早期診断はますます重要となってくる．

　本人・家族に対しては，過剰