診療支援
治療

ポリファーマシーへの対策
reducing polypharmacy
矢吹 拓
(国立病院機構栃木医療センター・内科副部長)

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治療のポイント

・患者が内服している薬剤をすべてリストアップする.

・処方カスケードやクライテリアを意識して処方薬剤の適切性について評価する.

・薬剤のメリットやデメリットについて患者と話し合う.

・減薬を希望する場合には慎重に減薬し,その経過をフォローする.

◆病態と診断

A病態

・ポリファーマシーに明確な定義はないが,一般的には薬剤を5種類以上内服している状態とされている.

・高齢者の約半数がポリファーマシー状態にあるともいわれ,日常的に遭遇する臨床課題である.

・5種類以上をカットオフとすると,高齢者にとって重要なアウトカムである機能障害や認知機能低下,転倒などと関連するという報告や,薬剤関連有害事象が増えたという報告がある.

B診断

・ポリファーマシーと診断するために,まずは内服している薬剤をすべてリストアップすることが重要である.

・特に複数の医療機関に通院している場合には,お薬手帳などをもとに薬剤師とも協働して内服薬剤の把握に努める.

・内服状況を確認し服薬アドヒアランスや残薬を把握する.

◆治療方針

 高齢者のポリファーマシーはさまざまなリスクがある状態ではあるものの,必ずしも減薬によるメリットが明らかになっているわけではないため,減薬ありきではなく内服薬剤の適正化が目的であることを念頭におく.

A薬剤の適切性評価:処方カスケード

 内服している薬剤をすべてリストアップしたのちに,処方薬のなかに“処方カスケード”がないかを確認する.処方カスケードとは,ある薬剤が処方されたのちに生じた薬物有害事象が,新たな症状と判断され新規の別の薬剤が処方される現象を指している.この場合,最初に処方された薬剤を中止することで,のちに処方された薬剤が不要になる可能性がある.処方カスケードかを判定するためには,薬剤の処方された順番が重要であり,代表的な処方カスケードの組み合わせを熟知しておくとよい.

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