治療のポイント
・内服できない理由を明確にすることが,薬剤投与方針の決定に重要である(内服困難となる病態:意識障害,嚥下障害,消化管閉塞など).
・意識障害の原因病態(例:低Na血症や高Ca血症)や消化管閉塞への対応(例:不完全腸閉塞への減圧処置や外科的処置)など可逆的な要因があれば,内服困難への対応と同時に治療可能性も検討する.
・経肛門投与が困難な病態(直腸腫瘍や人工肛門など)の有無を確認する.
本項では終末期や病態悪化時に内服ができなくなった場合に,在宅医療の現場で行う薬物投与方法の実際について解説する.
◆治療方針
A内服困難時の治療方法
投与経路は経口(舌下,液剤の口腔内投与),胃管による経腸,経肛門,点滴(静脈,皮下)投与である.在宅診療の現場では経肛門(坐薬)投与が,事前処方による準備の容易さ,症状発現時に家族や訪問看護で対応可能である迅速さの点で大きな利点がある.胃管留置での経管投与は侵襲的処置であり,死亡直前期の意識障害などでは処置の適応を倫理的に検討する必要がある(抗けいれん薬や甲状腺ホルモン薬など経腸投与が重要な場合もある).
B方針
終末期に対応が必要となる苦痛症状は,発熱,痛み,呼吸困難,悪心・嘔吐,せん妄・不眠などである.自宅療養では,これらの症状に対する事前の準備がなければ患者に不必要に長時間の苦痛を経験させることや,患者が望まない救急搬送や入院につながることがある.
老衰のような自然な経過での衰弱と癌患者では終末期に想定される症状が異なる.特に癌患者では,痛み,呼吸困難,せん妄など予想される病態の説明と対応方法を指示しておく必要がある.
C疼痛時
Px処方例 下記のいずれかを用いる.