診療支援
治療

看取りのプロセスと医師の役割
process of end-of-life care and doctor's task
星野大和
(ほしの在宅ケアクリニック・院長(千葉))

ニュートピックス

・コロナ禍では多くの病院で入院患者への面会制限が設けられ,特に終末期の患者にとって,それは在宅療養を希望する要因となった.病状が不安定であったり,家族の介護力が乏しかったりして,コロナ禍以前であれば病院で看取られていたであろう患者が在宅に移行し,看取りを行う在宅医へのニーズも高まっている.

A終末期

 在宅患者がたどる軌道は,導入期,安定期,急性増悪期,終末期に分けることができるが,本項では終末期における医師の役割を考える.それは,患者が苦痛なく生ききること,家族が悔いのないよう患者を支えきることの支援である.

 終末期の迎え方は,患者や病態ごとに異なる.慢性疾患のように,年単位の安定期ののちに終末期を迎える場合,増悪と寛解をともに乗り越えてきたことにより,患者(家族)-医師関係が構築されていることが多い.一方で悪性疾患のなかには,病院での積極的加療の適応が乏しくなり在宅緩和ケアを勧められ,導入期がすでに終末期である場合がある.患者や家族は不安や絶望感を抱いていることも多く,医師は信頼関係を短期間に構築する必要がある.その際には訪問看護師を媒介にするとかかわりやすい.訪問看護師は医師に比べ,頻繁に訪問し滞在時間も長いため,また医師には話しにくい本音などを患者や家族から聞き出しやすいため,信頼関係を早期に醸成しやすい.

B症状緩和

 医師の役割として,疼痛,呼吸苦,発熱,全身倦怠感,悪心・嘔吐などの症状コントロール,また誤嚥性肺炎などの合併症治療は最も重要である.終末期では治療的手段が限られ,QOL改善を目的に緩和的治療になることもあるが,症状緩和に真摯に取り組む医師に対し患者や家族は信頼を寄せながら,看取りに向かう.

 経口摂取が徐々にできなくなった場合,患者や家族は輸液を希望することがあるが,過剰な輸液は浮腫や気道分泌物の増加を招き,かえって身体的苦痛を増してしまうこ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?