治療のポイント
・心不全患者の在宅ケアでは,心疾患への対応だけではなく,多職種が連携して生活環境を整えることが重要である.
・心不全の標準的治療を継続し,至適な服薬管理・生活を送ることで,心不全の増悪を予防することができる.
・予測不能な急変をきたすこともあり,あらかじめ患者・家族が望む治療法に関して話し合っておくことが望ましい.
・終末期の治療抵抗性の呼吸苦にはオピオイドを用いる.
◆病態と診断
・高齢・ADLが低下した心不全症例では,誤嚥などの感染症のリスクが高く,食事や飲水摂取不足による脱水もきたしやすいことから,心不全が急性増悪するリスクが高い.また症状が出現しにくく,増悪の早期発見が困難な場合も多い.
◆治療方針
A入院から在宅管理への移行
退院直後は入院中とは環境が異なり,過労や,塩分・水分・服薬管理も不十分となるため早期に再入院となるリスクが高く,環境整備が重要である.
在宅医療への移行を円滑に行うためには,病態が安定した時点で入院と在宅の担当者でカンファレンスを行い,情報共有を行うことが望ましい.
B再入院の予防・早期発見
心不全の増悪因子としては,服薬アドヒアランスの低下,塩分・水分過多,過労,感染症,血圧上昇,ストレス,不整脈などが挙げられる.在宅医療で直接生活環境を観察することで,的確な指導や対応を行うことができる.
心不全増悪の早期発見の指標としては,症状・身体所見,体重変化が有用である.
1.自覚症状・身体所見
労作時息切れ,全身倦怠感などの自覚症状の有無や,体重増加,下腿浮腫,湿性ラ音や頸静脈怒張などの身体所見を確認する.血液検査(BNPなど),ポータブル心エコーによる評価も有用である.
2.体重
心不全症例では症例ごとに適正体重を設定することができ,体重の推移をみながら体液管理を行う.体重増加時には利尿薬の投与を行うが,在宅医療においては経口摂取ができず,ルート確保