診療支援
治療

助けを求める力が欠如した患者(セルフ・ネグレクト状態)への対応
support to patients lacking the ability to ask for help(self-neglect state)
川島 治
(清幸会行田中央総合病院・院長(埼玉))

ポイント

・地域共生社会の実現に向けた重層的支援体制整備事業におけるアウトリーチなどを通じた継続的支援事業が全国で展開されつつある.

・健康日本21(第二次)で健康格差が課題として取り上げられ,その縮小が目標項目に追加された.健康格差に影響を与える社会的決定要因(SDH:social determinants of health)が注目されつつある.

・複合的な課題を抱える人がその課題解決に同意した場合は重層的支援会議(ケース会議)で討議することが可能になるが,同意が得られないときは地域包括支援センターや介護支援専門員のもと,いわゆる「焦げ付き事例」としてその対応に難渋していることが多く,支援の糸口がつかめない現状がある.

・ライフラインの支払い困窮・救急搬送頻回要請者・徘徊などによる頻回の警察保護・受診や介護保険利用の中断など,重大な課題に直面する住民についての情報提供は,個人情報保護の観点から拒まれることが多い.

・このような介護や福祉だけでは解決困難な事例対応の切り札として,地域包括支援センターなどからの相談に応じて,医師が訪問する活動(医師アウトリーチ)が注目されつつある.

・医師は患者の社会生活面の課題に注目し,地域でのさまざまな支援へつなげる役割を担い,いわゆる社会的処方の一面もある.

・医学的な診立てや今後の支援に対する助言が求められる.

Aアウトリーチが求められる社会的背景

1)世帯構成(2030年推定):単身世帯(3世帯に1世帯)・高齢者単身世帯(7世帯に1世帯)・一人親世帯(10世帯に1世帯)とも増加.

2)生涯未婚率の上昇(2030年推定):男性約30%,女性約23%.

3)非正規雇用労働者割合の増加(2019年):男性22.8%,女性56.0%.

4)ひきこもりの増加(2015・2018年):若年(15~39歳)54.1万人,中高年(40~64歳)61.3万人,計115.4

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?