診療支援
治療

病院や専門医との連携
cooperation with hospitals and medical specialists
江口幸士郎
(今立内科クリニック(福岡))

Aはじめに

 病院医師(以下,専門医)と在宅医は,坂道を下る車の両輪である.専門医は身体/精神のよりよい状態を目指し,在宅医は生活/人生のよりよい経過を希求する.ADLや認知機能が低下してきた慢性進行性疾患の患者において,どちらかを欠くことは先行きの道程を危険にさらす.

 さらにいえば,在宅医の介入は「通院がまだできている頃」から始めることが望ましい.なぜなら,通院が困難となる前にもその患者の生活/人生はあり,病気から侵食を受けて苦しんでいるからである.在宅医には,生活/人生と病いの現場に立ちあい患者とナラティブを分かち合うことで,専門医とは異なる視点での協働を望みたい.

B専門医から在宅医へ

 入院患者を在宅医へ紹介する場合と,外来患者を在宅医へ紹介する場合とでは,環境に大きな差がある.入院時からの退院支援の流れは,多くの病院でルーチンとなっている.退院調整のための担当者がつき,退院前のカンファレンスが開かれ,病院・診療所の両方に報酬が発生する.

 しかし外来通院中の患者であれば,こうはいかない.院内のソーシャルワーカーも多忙で外来までは手が回らないし,外来看護師も連携業務に慣れた人材は少ない.専門医が主体となって動かざるを得ないが,何より多忙である.また,専門医は必ずしも在宅に詳しいわけではなく,適切な紹介のタイミング,紹介先などが周知・共有されている地域は少ない.

 千葉県の松戸市医師会では「二人主治医制」として,専門医と在宅医療との連携を促す仕組みを運用している.この仕組みで重要なのは,患者がまだ専門医に通院可能な状態から専門医と在宅医による診療を並行して行うことである.①85歳以上,②4つ以上の診療科に継続受診している,③訪問看護指示を専門医が発行している,④認知症と診断されていて,指導を理解・実行できない,⑤1年以内に死亡しても驚かない(サプライズクエスチョン),⑥要介護1

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