Aはじめに
病院医師(以下,専門医)と在宅医は,坂道を下る車の両輪である.専門医は身体/精神のよりよい状態を目指し,在宅医は生活/人生のよりよい経過を希求する.ADLや認知機能が低下してきた慢性進行性疾患の患者において,どちらかを欠くことは先行きの道程を危険にさらす.
さらにいえば,在宅医の介入は「通院がまだできている頃」から始めることが望ましい.なぜなら,通院が困難となる前にもその患者の生活/人生はあり,病気から侵食を受けて苦しんでいるからである.在宅医には,生活/人生と病いの現場に立ちあい患者とナラティブを分かち合うことで,専門医とは異なる視点での協働を望みたい.
B専門医から在宅医へ
入院患者を在宅医へ紹介する場合と,外来患者を在宅医へ紹介する場合とでは,環境に大きな差がある.入院時からの退院支援の流れは,多くの病院でルーチンとなっている.退院調整のための担当者がつき,退院前のカンファ