本項では,本書出版直近で動向に注目すべき予防接種について解説する.
A.9価HPVワクチン
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについては,2013年4月の定期予防接種化とほぼ同時期に2価および4価製剤における接種後神経学的症状の報告が増加したため,安全性への懸念から同年6月に定期接種を維持したまま「積極的勧奨の差し控え」(接種対象者への個別の周知広報1)の一時中断)の措置がとられた.その後の10年近い議論のなかで,海外での種々の臨床研究結果や,日本国内での接種者と非接種者の神経学的症状の有無を詳細に検討した臨床研究2)などを踏まえ,接種と神経学的症状の因果関係は疫学的に否定された.世界保健機関WHOも,接種と関連する重大な神経学的症状はないと2017年に発表している3).もちろん,原因がHPVワクチンではなくとも,神経学的症状に苦しむ女性にはプライマリ・ケアおよび各科専門領域が連携して適切なケアが提供されるべきである4).
安全性再確認を踏まえ,2022年4月に「個別勧奨の再開」という表現で上記措置が終了した.措置中の2016年度には1%未満へと激減した接種割合は,同再開直前の2021年度には30%台へと回復しており,今後さらなる回復が期待される.
個別勧奨再開後の2023年4月には9価ワクチンも定期接種化された.同製剤により日本の子宮頸癌の原因であるHPVの90%以上がカバーされる5).現状では2価,4価,9価の3ワクチンが定期接種で使用されており,接種開始年齢の違い,および接種機会を逃した対象者への救済措置(キャッチアップ接種)により,接種回数およびスケジュールがそれぞれに異なる.別掲の接種スケジュール表に加え,各自治体からの案内を確認いただき,誤接種のないよう対応いただきたい.
B.帯状疱疹ワクチン
日本では,帯状疱疹ワクチンとして遺伝子組み換えワクチンと生ワクチ
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