診療支援
治療

Ⅳ.高齢者特有の病態・生理と薬の効果
遠藤英俊
(聖路加国際大学・臨床教授)


1.疾病・病態

 高齢者に特有の病気は存在する.加齢とともに増加し,年齢に依存しており,若い人にはあまりみられない病気である.例えば骨粗鬆症や認知症はまれに若い人でもみられるが,ほとんどは高齢者であり,パーキンソン病などでもまれなケースを除けば高齢者である.多くの場合はいくつもの疾患が合併しており,時には治療の優先順位をつけて診療にあたるなど,高齢者を総合的に診ることが求められている.高齢者に多い病気は慢性疾患であることが多く,時に肺炎や心不全などは急性増悪することがある.

 高齢者の病気の症状は感染症があっても発熱しない場合があったりして,症状が非定型的である場合がある.症状が時に潜在的でわかりにくい場合もある.

 また高齢者では成人ではあまりみられない主な症状,すなわち老年症候群が存在し,主なものは認知症や尿失禁,転倒・骨折である.最近では嚥下障害が大きな問題となっており,経口摂取が困難にな

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