診療支援
治療

Ⅱ.薬物動態および薬物反応性に及ぼす肝・腎障害の影響
安藤 仁
(金沢大学教授・細胞分子機能学)
藤村昭夫
(自治医科大学名誉教授・薬理学講座臨床薬理学部門)


 一般的に,経口投与された薬物は消化管(主に上部小腸)から吸収され,門脈を経て肝に至り,肝の薬物代謝酵素により代謝される(図1).多くの薬物は脂溶性であり,細胞のリン脂質二重膜や脂肪滴内に蓄積しやすいため,そのままでは体内から排泄されにくい.薬物代謝酵素は薬物の薬理活性を変化させるとともに,薬物の極性を増して(水に溶けやすくなる)尿中あるいは胆汁中に排泄されやすい形に変換する役割を担っている.

 血中では薬物は血漿蛋白と結合した結合型あるいは結合していない非結合型として存在しており,このうち非結合型薬物が生体膜を通過して細胞内で作用を発現する(図1).一方,分子量が大きい結合型薬物は,組織内に分布することができず,さらに肝での代謝や糸球体ろ過も受けないため,血中に留まりやすい.なお,酸性薬物は主にアルブミン,塩基性薬物は主にα1酸性糖蛋白に結合する.非結合型薬物は血中と組織内で平衡状態に

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