診療支援
治療

Ⅲ.肝・腎障害時における一般的な薬物投与法
安藤 仁
(金沢大学教授・細胞分子機能学)
藤村昭夫
(自治医科大学名誉教授・薬理学講座臨床薬理学部門)


A.肝障害時


1.肝機能の評価

 肝障害時の薬物動態の変化は単純ではなく,現時点では薬物投与量を定量的に補正するための簡便な臨床的指標はない.一般的に,個々の薬物代謝酵素の活性を正確に評価するためには比較的安全なプローブ薬を用いた負荷試験(薬物動態試験)が必要となるが,薬物代謝に関与する経路(酸化,還元,抱合など)や酵素分子種はそれぞれの薬物で異なっており,しかも肝障害による各酵素活性への影響は一様ではないために,負荷試験の臨床的有用性は限定的である.また,肝血流量の評価法としてはインドシアニングリーン試験が有用であるが,有害反応としてショックが出現することがあり,安易にできる検査ではない.一方,酸性薬物の蛋白結合率低下の指標として血清アルブミン濃度がある.肝障害のために血清アルブミン値の低下やプロトロンビン時間の延長を認める場合には,肝薬物代謝酵素活性も低下していることが知られている.した

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