診療支援
治療

Ⅳ.倦怠感
木澤義之
(筑波大学医学医療系・緩和医療学・教授)
久永貴之
(筑波メディカルセンター病院・緩和医療科・診療科長/緩和ケアセンター長)
山口 崇
(神戸大学医学部附属病院・緩和支持治療科・特命教授)


 がん患者における倦怠感の頻度は78~96%とされ,最も頻度の高い症状の1つである.患者はだるさや極度の疲労感を訴えることが多く,症状による日常生活への影響が非常に大きい.また痛みなどの症状と比較して,患者が自ら訴えないことも多いため,倦怠感の有無について尋ねてみることが重要である.


A.治療可能な原因への対応


 倦怠感の原因としてはがん自体,悪液質の進行によるもののみではなく,薬剤性(がん薬物療法,オピオイド,鎮痛補助薬,向精神薬など),貧血や感染症,高Ca血症,抑うつ,睡眠障害などが原因となることがある.そのような場合には,予後や希望などを考慮して薬剤の見直しを行い,輸血や抗菌薬,ビスホスホネート製剤,抗うつ薬などによる治療について検討する.睡眠が十分にとれているかを確認し,必要であれば睡眠薬など睡眠障害への対応を検討することも重要である.


B.エネルギー温存療法


 エネルギー温存療法とは,体力の低下した患者が,限られたエネルギーを温存し効果的に利用していくための過ごし方の工夫のことである.

 具体的には,①生活動作や仕事などのなかで優先順位の高いことにエネルギーを使う,②生活で必要なものが手に届きやすいように配置したり,介助者の援助を受けられる場合は過度に頑張らずにエネルギーを温存する,③1日のなかで少しずつ何回かに分けて休息をとる,などを行っていく.


C.薬物療法


 コルチコステロイドは進行がんに伴う倦怠感や,その他の原因による倦怠感を改善する可能性があるため,投与を検討する.ただし,効果は全例にあるわけではないので,無効であれば投与を中止する.また高血糖や口腔内カンジダ症,せん妄や抑うつといった精神症状などの副作用についても注意が必要である.

 効果は1~2か月で減弱することが多く,また長期投与による副作用のことも考え合わせると,予後が3か月以上予測される場合は原則として投与を行

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