診療支援
治療

オンライン診療を始めるために
黒木春郎
(医療法人社団嗣業の会 こどもとおとなのクリニック パウルーム・院長)


 本項では「オンライン診療入門」のなかで,オンライン診療を導入するための具体的な方法を中心に紹介する.なお,オンライン診療が目指す日本の「医療デジタルトランスフォーメーション(医療DX)」,またオンライン診療を行うための「オンライン診療の診断学」,さらに日本と世界を比べた現状など重要な課題に関しては本付録の他論考に譲る.


A.オンライン診療とはどのようなものか


 オンライン診療の定義は「情報通信機器を用いたリアルタイムでの診療」である1).その実際がどのようなものかに関しては,日本プライマリ・ケア連合学会が作成した動画が参考になる2).Web画面上で医師と患者が面談するわけである.Web画面での対談であり,実際に患者に触れ,処置をすることはできないが,全身状態,意識状態の把握は可能である.ある程度の理学所見も評価できる.主要な診療は可能である.

1.診療する環境

 診療する環境としては,患者側,医師側とも電波環境のよいことが前提である.そして患者側には,患者の顔が明るくなるような採光を工夫してもらう.患者側がアクセスする場所はプライバシーが保たれることが必要である.自宅が最適であるが,プライバシーが保たれれば,勤務先あるいは駐車中の車内などでも可能である.周りに他人がいるところでは不適切である.

2.医師側の環境

 医師の側は医療情報を適切に取得できる環境であれば場所は問われないが,やはり医師・患者ともにプライバシーを保たれるということは前提である.医師の側は電波環境がよい場所で,自分の顔が画面の正面になるようにする.自分の顔が明るくなるような採光にして,背景はなるべくシンプルなものが望ましい.患者と話すときにはできる限り滑舌をよくして,表情での反応を意識して行う.カメラ目線が患者のほうを見ることになるが,カメラ目線で終始診察を行うことは不可能である.患者の顔を見ていたほうが医師側の表

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