診療支援
治療

序――診療ガイドライン:わが国の現状とより精緻な作成手順の導入
福井次矢
(東京医科大学茨城医療センター・病院長)


 質の高い医療を提供するうえで,診療ガイドラインが重要な役割を果たしていることは,いまや衆目の一致したところとなった.顧みると,厚生労働省の「医療技術評価の在り方に関する検討会」(1996年)および「医療技術評価推進検討会」(1998年)において,evidence-based medicine(EBM)を普及させることが決定されて以降,国を挙げて,「EBMの手順に則った―エビデンスに基づく―診療ガイドライン」が作成されてきた.その成果は,2023年10月26日時点で,日本医療機能評価機構 医療情報サービス事業(Minds)ホームページ上に公開されている最新版ガイドライン本文掲載数が454件を数えるに至っていることに表れている.


A.診療ガイドラインの質

 Mindsでは,作成された多くの診療ガイドラインのなかから公開の順序をつける必要があり,Minds内に選定部会が設置され,2か月に1度の選定作業が行われてきた.選定にあたっては,2003年に作成され,2009年に改訂された国際的な評価ツールであるAGREE(Appraisal of Guidelines for Research and Evaluation)を参考にし,特に作成の厳密さに係る項目を重視してきた.最近では,ほぼ理想的な「エビデンスに基づいた診療ガイドライン」も作成されるようになったものの,大多数の診療ガイドラインに共通する要改善点も明らかとなってきた.例えば,診療ガイドラインが対象とする集団(患者,公衆,その他)の意向や視点,診療現場での診療ガイドラインへの準拠の度合いをモニターあるいは監査する基準,などの記述が不十分な点である.特に後者の記述が望まれるのは,確立されたエビデンスと診療場面で実践されている内容との較差(evidence-practice gap)を知るために不可欠なquality indicat

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