医療行為に用いる医薬品や医療機器の安全性については承認前の臨床試験(治験)において検討が行われている.しかし,治験の対象者数は限られており(多くは1医薬品当たり1,000名前後が多い),また試験期間も比較的短いため(多くの場合1年以内),頻度は低い(例,0.1%)が重篤な副作用や薬物の長期投与後に発症する副作用については治験の段階で確実に除外することは理論的に困難である.このため,そのような副作用は市販された後にはじめて明らかになることが多い.このような事実を背景として,市販後に治療を目的として適正に使用された医薬品および生物由来製品による健康被害を公費で救済する目的で設立されたのが表図の2種類の健康被害救済制度である.公表されたデータでは当該制度により令和3年度末までに27,609件に給付がなされている.
ただし,抗癌剤,免疫抑制剤などの一部にこの制度の救済対象とならないものもあるので