A概略
DCSは,重症外傷患者に対する手術戦略である.
生理学的異常をきたした外傷患者に対し,完全な修復や再建などを含む一期的な手術を目指すことは過大侵襲となりうる.術中にdeadly triad(死の3徴)とよばれる低体温・アシドーシス・凝固異常の出現をきたした場合,患者を救命することは困難となる.それを防ぐために初回手術では応急的な止血と汚染の制御にとどめ,消化管の再建などは省略して可及的低侵襲かつ短時間で手術を終える.引き続き,集中治療と輸血による生理学的異常や凝固異常の是正に努め,全身状態が改善したところで,再建を含めた根治手術(planned reoperation)を行う.
この一連の戦略が現在の外傷外科分野での常識となっている.
B具体的な方法
例えば肝損傷と腸管損傷を伴う出血性ショックの患者に緊急手術を行う場合には,DCSの方針とすべきである.初回手術で肝ガーゼパッキングおよ