GL安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)
A冠動脈バイパス術とは
虚血心疾患(狭心症,心筋梗塞)の概要は他の項にあるので,ここでは外科的治療法にフォーカスして解説する.狭窄や閉塞のある冠動脈への血行再建の1つが冠動脈バイパス術で,冠動脈の狭窄や閉塞の末梢側に血液を運ぶ別の道筋(バイパス)を作成する手術である.
Bバイパスグラフトの選択
バイパスに使用する血管として,いまだに人工血管は臨床使用されておらず,患者自身の内胸動脈(胸骨の裏側を走行する),橈骨動脈(前腕の親指側を走行する),胃大網動脈(胃に入る動脈の1本),大伏在静脈を使用する.このなかで内胸動脈が最も長く開存する動脈であり,患者の年齢にかかわらず,高い頻度で使用される.一般的に動脈グラフトは静脈グラフトより長期開存率が高いので,1本の内胸動脈を使うより,2本(両側)の内胸動脈を使用したほうが,長期成績(生存率,心